学び
2年プロジェクト
「デジタルなものづくりの楽しさと可能性に触れる」
情報科学科教授 栗原 一貴
2年プロジェクトでは、3人の教員がそれぞれ5回の講義を担当し、学生は3グループに分かれて順番に3つの講義を受けます。様々なスキルを身につけるという狙いから、3つの講義では全く違う分野からの課題が与えられます。実践を交えたこの授業では、プログラムを書くことに慣れてきた学生が実際に何かを作る経験を積む機会になります。私の今年度の講義は、三次元プリンタ(3Dプリンタ)を扱える技術を学ぶことが課題です。
近年、第三の産業革命ともいわれる「メイカーズムーブメント」が巻き起こっています。インターネットおよび3Dプリンタなどの各種デジタル工作機器を組み合わせて、今までにないものづくりが可能になりつつあります。情報技術はもはや画面の中にとどまらず、身の回りのあらゆる日用品の中で活用されるようになってきているのです。
私の講義では、「何かの役に立つ道具をデザインし、3Dプリンタで制作する」ことを学生全員の目標にします。各種デジタル工作機器の基本的知識と使い方、将来性や問題点を学び、コンピュータを用いた三次元形状のデザイン演習を行います。そしてデザインしたものを実際に3Dプリンタで印刷し、その機能や特徴についてお互いに発表します。
自分のデザインした電子データが実際の物質として生み出され、手に取れるのは、言い知れぬ感動があるものです。何を作るかは学生の創意工夫次第ですので、私もあっと驚くような作品にたくさん出会えます。発表会では、「これカワイイ!」とか、「これは便利! 欲しい!」といった歓声があがります。そこで「皆さんがデザインしたものは電子データですから、そのままものの数分でインターネット上で売ったり買ったり、コピーしたりできるんですよ。
3Dプリンタさえ身近にあれば、モノがデータとして流通できる。これがデジタルなものづくりの時代の一つの側面です」と教えると、学生たちは到来しつつある世界の可能性にピンとくるようです。
身の回りの電子機器を思い浮かべてください。必ず小さなコンピュータと、それを包む様々な材質の入れ物(ハードウェア)からなっているはずです。情報科学科では情報システムを実現する方法を学びますが、それは何もプログラミングに限りません。こういうハードウェア制作の技術も大切です。この講義は3Dプリンタ設備の制約から、あまり大人数向けに実施することはできません。それを必修科目として学生全員に提供できるのは、少人数教育を重視する本学ならではと言えると思います。